夏になると「暑気払い」と銘打った飲み会や食事会が開催されますが、詳しい意味をご存じですか?

また、暑気払いと似たものに「納涼会」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

本記事では暑気払いと納涼会、それぞれの意味や時期を解説しながら、その違いを詳述します。

さらに、暑気払いにおすすめな食べ物・飲み物も紹介しますので、これから夏のイベントを企画される場合は、ぜひ参考にしてください。

暑気払いとは?

暑気払いには二つの意味があります。一つは「暑さを払う」で、もう一つは「暑さによる疲労を払う」です。暑気払いの語源は漢方医学に由来しており、夏ならではの風習として古くから日常的に行われてきました。

ビジネスシーンにおいては「暑気払い」=「飲み会」のイメージが強いかもしれませんが、本来は「暑さを払って元気になろう」という意味です。たとえば五感で涼を得たり、栄養補給で体力をつけたりなどして、暑気を払います。

■暑気払いのポイント

  • 体を冷やす。(例:食べ物、飲み物、水遊び)
  • 体を温める。(例:食べ物、飲み物、足湯、漢方)
  • 発汗をうながす。(例:香辛料、マッサージ、温浴)
  • 食欲増進をはかる。(例:食べ物、飲み物、漢方)
  • 疲労を回復させる。(例:栄養補給、漢方)
  • 涼やかな食を楽しむ。(例:ひんやり感、透明感)
  • 涼やかな環境で過ごす。(例:打ち水、風鈴、川床)

暑気払いの歴史を江戸時代にまでさかのぼれば、当時は甘酒、薬湯、行水、川遊びなどで暑気払いをしたとされています。

現代風にいうと「暑気払い」=「夏バテ予防」「夏の健康対策」ではないでしょうか。夏の暑さに負けると「疲れ」「食欲不振」「体力低下」といった不調のほか、「冷え」「胃腸虚弱」などの健康不良に悩まされることもあります。

暑気払いは、暑さだけでなく、夏特有の不調や健康不良から体を守るため、さまざまな方法で体への負担を払う行為をさします。

暑気払いと納涼会の違いは?

夏ならではの風習のため暑気払いと混同されるのが納涼会です。それぞれの意味や時期から違いを見ていきましょう。

意味の違い

暑さを払うのが「暑気払い」、暑さをしのぐため涼を求めるのが「納涼会」です。

暑気払いには「暑さを払って元気になろう」といった意味があり、具体的な方法や行為をさします。一方の納涼会は「夕涼み」に由来することから、夏の暑さをしのぐためのイベントや過ごし方をさします。納涼会のポイントは「暑い中で涼を求めて楽しめるもの(こと)」です。

たとえばビアガーデンを例に解説しましょう。ビールは冷たくて喉ごしがよく、暑気払いの飲み物としても好まれています。また、屋外で楽しまれるビアガーデンは開放的で心地よい雰囲気から納涼会のイベントとしても人気です。

■暑気払い……ビールという飲み物、ビールを飲む行為。
■納涼会………ビールを飲んで涼むこと、ビアガーデンで風流に過ごすこと。

暑気払いに「飲み会」のイメージがあるのは、ビールに代表される冷たい飲み物を楽しむ行為だからかもしれません。もちろん、暑気払いのためのイベントとして飲み会を開催するのは間違いではありません。

時期の違い

暑気払いの時期は二十四節気でいう「夏至(6月21日頃)」から「処暑(8月23日頃)」までとされています。一年で最も日照時間の長い夏至から夏の暑さが和らぐ処暑までは、梅雨、梅雨明け、夏の土用(どよう)、大暑(たいしょ) と暑い季節が移ろう時期です。

一方で納涼会は「梅雨明け」から「盆明け頃」までの暑い時期に行われるのが一般的ですが、近頃は残暑厳しい9月初旬まで行われるケースもあります。

暑気払いも納涼会も、「この時期でなければいけない」という決まりはありません。季節外れの気温上昇や不安定な天候により、近年は暦にこだわらず楽しまれています。いずれも暑い時期に夏の風物詩として取り入れると的外れにはならないでしょう。

暑気払いにおすすめな食べ物・飲み物

暑気払いには暑さと暑さによる疲労を払う意味がありますから、冷たいものを食べたり飲んだりするだけではありません。夏バテ予防や夏の健康対策に効果的な食べ物・飲み物も暑気払いとして取り入れられます。

ここでは、夏の体をクールダウンさせるものから見た目の涼やかさにこだわったものまで、暑気払いにおすすめな食べ物・飲み物を紹介します。

■暑気払いにおすすめな食べ物・飲み物のポイント

  • 体を冷やすもの。
  • 体を温めるもの。
  • 発汗をうながすもの。
  • 食欲を増進するもの。
  • 疲労を回復させるもの。
  • 涼やかな気分にさせるもの。

暑気払いにおすすめな食べ物・飲み物を取り入れて、夏の暑さに負けない日々を過ごしましょう。もし、暑気払いのイベントを企画するなら、お店の予約や会場での準備に役立ててください。

体を冷やす食べ物・飲み物

体にこもった熱気を払うのは暑気払いの基本。体に熱がこもると疲労感が増したり、体温が上昇したりしてバテてしまいます。

体を冷やす食べ物・飲み物で体の内側からクールダウンさせ、気分もリフレッシュしましょう。体を冷やす食べ物・飲み物には、冷たいもの以外に成分による働きで結果的に体が冷やされるものもあります。

どうか食べ過ぎ、飲み過ぎにはご注意ください。

~おすすめの食べ物・飲み物~

  • 夏野菜(スイカ、キュウリ、トマト、ナス、ゴーヤなど)
  • 果物(バナナ、キウイ、パイナップル、マンゴー、メロンなど)
  • かき氷、アイスクリーム
  • 冷奴、そうめん、冷やしうどん、冷麺
  • ビール、コーヒー、緑茶

体を温める食べ物・飲み物

夏は冷たいものを食べ過ぎたり飲み過ぎたり、冷房の効いた室内で長く過ごしたりするため、体が冷えてしまうこともあります。冷えが改善しないと胃腸虚弱や疲労感などの体調不良を招きますので、体を温めるのも暑気払いの一つです。

体を温める食べ物・飲み物で夏の冷えから体を守り健康的に過ごしましょう。体を温める食べ物・飲み物には、熱いもの以外に成分による働きや製造方法によって結果的に体が温められるものもあります。

~おすすめの食べ物・飲み物~

  • 野菜(タマネギ、カボチャ、ショウガ、ニンニク、ニラなど)
  • 果物(リンゴ、柑橘類)
  • 発酵食品(納豆、キムチ、チーズなど)
  • 焼き肉、ジンギスカン鍋、うなぎ
  • 日本酒、紹興酒

発汗をうながす食べ物・飲み物

夏の冷えは汗をかきにくくする場合があります。汗をかかないと体温調節がうまく機能しなかったり、熱がこもってのぼせたりするため発汗をうながすのも暑気払いのポイント。

発汗をうながす食べ物・飲み物で体のコンディションを整え、暑い夏を乗り切りましょう。発汗をうながす食べ物・飲み物には「辛み成分」や「発酵成分」が含まれる食品のほか、「ハーブ(薬草)」などがあります。

~おすすめの食べ物・飲み物~

  • 香辛料を使ったもの(カレー、火鍋、キムチ鍋など)
  • 焼酎のお湯割り、ショウガ湯、カモミールティー

食欲を増進する食べ物・飲み物

夏の暑さで食欲が落ちると体力も気力も低下します。夏に受けるダメージを払って元気を取り戻すのも暑気払いの目的です。

食欲を増進する食べ物・飲み物で食生活を充実させ、夏バテから体を守りましょう。食欲を増進する食べ物・飲み物のポイントは「香り」、「辛み」、「酸味」です。

~おすすめの食べ物・飲み物~

  • スパイシーなもの(カレー、エスニック料理など)
  • 酸味のあるもの(梅干し、レモン、酢の物など)
  • 香ばしいもの(焼き肉、焼き鳥、うなぎの蒲焼など)
  • 香味野菜(にんにく、しょうが、ねぎなど)
  • ピリ辛スープ、トマトスープ

疲労を回復させる食べ物・飲み物

夏は冷えや寝不足、食欲減退、胃腸虚弱などから疲労がたまりやすくなります。たまった疲労で体調を大きく崩さないよう、こまめに疲労を回復させるのも暑気払いのテーマです。

疲労を回復させる食べ物・飲み物には「ビタミンB1」や「ビタミンC」、「クエン酸」、「アミノ酸」「抗酸化成分」などが含まれています。疲労を回復させる食べ物・飲み物で体に活力を取り戻しましょう。

~おすすめの食べ物・飲み物~

    • うなぎ、豚肉、レバー
    • 黒酢ドリンク
    • 豆乳、牛乳
    • 甘酒、梅酒
    • 柑橘類
    • カボチャスープ
    • 梅ジュース、トマトジュース

見た目にも涼やかな食べ物・飲み物

夏は見た目の涼やかさで気分を爽やかにするのも立派な暑気払いです。見た目にも涼やかな食べ物・飲み物で夏の風情を楽しみましょう。

見た目にも涼やかな食べ物・飲み物には、古くから暑気払いとして好まれている伝統的なものもありますし、近年になって人気が出ているものもあります。「ひんやり感」、「透明感」、「瑞々しさ」、「スッキリ感」、「さっぱり感」などがポイントです。

~おすすめの食べ物・飲み物~

  • そうめん、冷や麦、冷やしうどん、ざる蕎麦
  • 冷しゃぶ、冷麺、ガスパチョ(冷製スープ)
  • ゼリー、ジュレ、ジェラート
  • わらび餅、くずまんじゅう、水無月、あんみつ
  • ラムネ、冷やしあめ

まとめ

本来、暑気払いと納涼会には意味においても時期においても違いがあります。ここで似て非なる夏の風物詩の違いをおさらいしておきましょう。

■暑気払いの意味……暑さや暑さによる疲労を払う方法、行為。
■納涼会の意味………夏の暑さをしのぐためのイベント、過ごし方。

■暑気払いの時期……夏至(6月21日頃)から処暑(8月23日頃)まで。
■納涼会の時期………梅雨明けから盆明け頃まで。

それぞれ古くから伝わってきた意味や時期に違いはありますが、厳密な決まりはありません。

何が違うのかさえ知っておけば、夏のイベントに暑気払いや納涼会を企画する場合の目安にはなるでしょう。

暑気払いとして飲み会や食事会を予定しているなら、ぜひ、本記事で紹介したおすすめの食べ物・飲み物も参考にしてください。

  • 体を冷やすもの。
  • 体を温めるもの。
  • 発汗をうながすもの。
  • 食欲を増進するもの。
  • 疲労を回復させるもの。
  • 涼やかな気分にさせるもの。

その日の天気や体調、気分などに合わせ、いろいろな食べ物・飲み物で日頃から暑気払いしていくのも夏を乗り切る大切な過ごし方です。